副業中の社員が怪我したら、労災保険はどうなる?

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企業が副業解禁を検討するときに懸念することの一つとして、労災保険の適用関係があります。

例えば、本業から副業先へ移動していたときに交通事故に遭った場合は本業と副業どっちの労災になるのか?などです。

この記事では、副業時の労災保険の適用について解説します。

この記事で分かること

労災保険は副業先でも加入するの?

社員が副業で他社からも雇用される場合、副業先でも労災保険に加入します。

これは、「事業主は、労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず、労働者を1人でも雇用していれば、労災保険の加入手続を行う必要がある」とされているからです。

では、副業社員が労災事故に遭ったとき、本業と副業先どちらの労災保険が適用されるのか、ケースごとに見ていきましょう。

労災保険に加入するのは雇用契約の場合のみです。これからのお話は全て雇用契約であることを前提としています。

副業社員が労災事故に遭った場合どうなるの?

ケース1:本業から副業先への移動時間中の交通事故

人事担当者

社員が会社から副業先に移動するときに事故に遭ったら、どちらの会社の労災が適用されるのですか?

1日の中で、最初に本業で働き、その後副業先で働く予定だった場合を考えます。

もし、本業から副業先への移動中に交通事故等に遭ってしまった場合、副業先の労災保険が適用されます。

これは、副業先で労務を提供するための通勤時間と考えるからです。

事業場間の移動は、当該移動の終点たる事業場において労務の提供を行うために行われる通勤であると考えられ、当該移動の間に起こった災害に関する保険関係の処理については、終点たる事業場の保険関係で行うものとしている。

労働基準局長通達(平成 18 年3月 31 日付け基発第 0331042 号)より引用

・自宅から本業への移動中での事故:本業の労災が適用
・本業から副業先への移動中での事故:副業先の労災が適用
・副業先から自宅への移動中での事故:副業先の労災が適用

なお、通勤中の労災事故でも、過労によるものの場合などは後述する通り本業と副業先の労務負荷などを総合的に判断し、適用がされます。

ケース2:過労などによる事故

次に、副業社員が過労などで倒れてしまった場合を考えてみましょう。

本来労災保険は、事故があった際に職場での労務負荷を評価して労災になるかどうかが判定されます。

しかし、複数の事業所で雇用されている場合、本業と副業それぞれにおける労務負荷はそこまで大きくない場合があります。

この場合は、それぞれの就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定が行われます。
これは、2020年9月1日付で改正された内容で、それまでは個々の会社ごとによる労災の評価しかされず、副業をしている方にとってとても不利な状況でした。
このように、国も副業がしやすいような仕組みを整えている方向性であることが分かります。

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」パンフレットより引用

本棚から本が落ちてきて怪我をした、など、その事業所における事故であることが明らかな場合は、その事業所の労災が適用されます。

副業社員への労災保険の給付額は減ってしまったりしない?

本業と副業の賃金は合算されて給付額が計算されます

副業希望者

副業先でも労災が適用されるのはありがたいけど、副業先の収入は少ないので給付額が少なくなってしまわないか心配です。

社会保険労務士

副業をされている方の給付額は、本業と副業の賃金を合算して給付されるのでご安心ください。

最後に、副業社員が本業と副業のどちらかで労災に遭った場合、給付額がどうなるかを見ていきましょう。

労災保険は働いている会社での3カ月間の平均賃金から給付される日額が算出されます。
副業をしている方はどうなるかというと、本業と副業における賃金が合算され、労災保険の給付額が計算されるため、万が一働けない状態となった場合でも、必要な給付を受けることができます。

これも、先ほどと同じく2020年9月1日付の法改正の内容で、それまでは労災認定された会社の賃金のみでしか給付額が計算されず、副業社員にとって十分な給付が受けられない状況でした。

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」パンフレットより引用

最後に

今回は、副業をしている社員の労災保険の適用について解説してきました。
副業解禁を検討する経営者様、人事担当者様にとって、解禁後の社会保険の適用については押さえておきたいポイントだと思います。
この記事が副業解禁の一助になれば幸いです。

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